演劇カンパニー・アリスインプロジェクトの旗揚げ作であると同時に、同カンパニーの人気ナンバーワン作として、再演、リニューアル、さらに、映画化、アニメ化と、マルチな展開を見せてきた「アリスインデッドリースクール」。その誕生から10年を迎えた今年、新たな展開を見せる。当時、同作の演出を手掛けた松本陽一と、その後同作のリニューアルを手掛けることとなった扇田賢、そして脚本家の麻草郁の3人がタッグを組んで、新たなカンパニー「松扇アリス」を結成(麻草氏の名前はどこにあるのだろう。アリス?)。その3人の手によって、作品に新たな息吹をもたらすこととなった。
それが、「オトナインデッドリースクール」と「オヤジインデッドリースクール」だ。タイトルを見て分かるように、前者はオリジナルでは女子高校生をフィーチャーしていたものを、オトナ(おばさん)に、後者はオトコ&オヤジに、それぞれ焦点をあて、アノ状況下でどのような人間ドラマを展開するのかが、醍醐味となっている。
ドラマの大筋や登場人物のキャラ設定は、オリジナルとほぼ同等。下界で蠢く動くアレに対する恐怖や仲間たちとの葛藤を、年齢と性別が異なるキャラクターが表現することになる。
今回演出を担当する松本は「物語の大きな軸は変わっていませんが、(人間)ドラマの部分が、オトナ、オヤジで(これまでと)全然違う色になっています。ぜひ、両方の作品を見て、その違いを感じてほしい」と自信を見せる。
ただし、大枠は同じでも神の宿る細部は異なるそうで、「屋上でする会話ひとつとっても、同級生(あるいは、社会にまだ出ていない、年齢の近い子)たちのものと、40歳、50歳の人物がするものとでは、まったく違う印象を受けるはずです」。その結果として、より人間ドラマが浮き彫りになるそうで、中でもオヤジ版は「より屈強なイメージになるのかと思ったら、人間的な弱さがさらに強調」されたそうで、氏の描きたかった人間ドラマに深みが増し、氏も「重厚すぎるかも」と感じるほどの雰囲気を、稽古期間中からまとっているそうだ。
ちなみにオトナ版で猪狩薫を演じる渡壁りさは、過去に同役を演じた経験があり、「オリジナルを演じた彼女が大人になって、オトナを演じたらどうなるのか」ということを加味しての配役という。注目したい。
多少ネタバレ的なこと書いてしまうが、和麿はオトナになってもアイドルになりたい願望を持っているそうで、オトナ版もオヤジ版もアノシーンは生きているという。なお、オトナ版の和魔を演じるSetsukoは、歌のプロフェッショナルでもあり、松本曰く「歌のクォリティは相当に高い」完成度となっているそう。
また、オヤジ版でも「ポーズボタン」を歌うシーンはあり(ホントか!)、松本は「泣けます」と強調していた。
以下、会見出席者のコメントを抄録します。
●オトナインデッドリースクール
<七海とろろ/墨尾優 役>
ゾンビが出てきて、人が死ぬという無茶苦茶な状況の中で、人に元気を出してほしいという思いから漫才をする精神を、私はすごく尊敬しています。その強さを表現したいです。
<椎名亜音/氷鏡庵 役>
再演を重ねていくうちに途中から生まれたキャラですけど、いつの間にか物語のキーマンになったり、周りの人と違う世界観で生きているという印象があります。それをどう演じようか、まだ悩みはありますが、今までの中で一番、人間味のある氷鏡を演じられたらと思います。高校生なら変わりものでいいんでしょうけど、オトナになってもあのままですから、コイツ平気なのかなって、心配ではあります(笑)。
<Setsuko/青池和麿 役>
女性市長になった和麿を演じます。優のおばという役回りで、市長として人の上に立つ人間が、段々人間味を取り戻していく姿を演じられたらと思います。そんな人間が、数十年思い続けてきたアイドルへの思いをカミングアウトするシーンは、キモですね(笑)。
●オヤジインデッドリースクール
<布施勇弥/墨尾優 役>
死のうとしていたけど、信(薫太)と出会って、人生変わって、漫才を始めて、最後には生きることに執着している役なんだろうなと思っています。そういう部分を表現したいです。
<白部由起夫/界原依鳴 役>
前職に映画監督の経験を持つ、市役所の広報課勤務の界原を演じます。物静かな役であまりしゃべりませんが、オープニングダンスはバキバキに踊りますので、そのギャップを見てほしいです。
<小野寺丈/柏村香也 役>
自衛隊員の柏村を演じます。下界で蠢いているあいつらのことを一番理解していて、柏村の登場で場の空気を一変させる役回りとなっています。シリアスな役ですが、普段はコメディものを多く演じているので、ちょいちょい笑いを取ろうと思います。
舞台「オトナインデッドリースクール」
10月3日より8日まで、池袋シアターKASSAIにて上演
<キャスト>
七海とろろ 遠藤瑠香 椎名亜音 高瀬川すてら Setsuko 真野未華 市倉有菜 八木橋里紗 井坂茜 高宗歩未 渡壁りさ 大仲マリ 川又咲 稲葉麻由子 八坂沙織 蒼矢朋季
舞台「オヤジインデッドリースクール」
10月10日より14日まで、池袋シアターKASSAIにて上演
<キャスト>
布施勇弥 薫太 佐藤正宏 夢麻呂 白部由起夫 小野寺丈 小西優司 小沢和之 藤堂瞬 石田太一 白石裕規 新村享也 高見澤文彬 岩井翔 大島祐也
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