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  • 執筆者の写真yasu

舞台「オヤジインデッドリースクール」遂に開幕! 屋上で繰り広げられるドタバタの中で、オヤジから漢へと進化する魂の芝居は必見

 演劇ユニット・松扇アリスの最新舞台「オヤジインデッドリースクール」の初日を迎える10月10日(木)、最終稽古(ゲネ)の模様が報道陣に公開された。



 これは、アリスインプロジェクトの名作舞台「アリスインデッドリースクール」のスピンオフ作品であり、先週(~8日まで)上演されていた「オトナインデッドリースクール」の姉妹作となるもの。世界観や物語、展開、キャラクターのベースはオリジナルを踏襲しながらも、年齢や性別を変えたらどうなるのか? を表現した、ある意味実験的な舞台となっていた。


 「オトナイン~」では、オリジナルとの“年齢差”からくるキャラの掘下げの違いを堪能できたが、“性別”を変えた本作では、より重厚な展開が魅力となり、キャラクターの新たな造形が味わえる作品に仕上がっていた。



 別に行われた会見で脚本担当の麻草は、「(オヤジ版はオヤジの)みっともなくて、情けなくて、足掻いている姿が、(心に)響く」と語っていたが、まさにその通りの演出であり、オトナ版=女性に比べて決断が遅く、いつまでもウジウジしているという男(オヤジ)の属性を見事に表現しているように感じた。


 しかしながら、心の内に秘めている想いを吐露し、決断したのちの姿は、それまでとはまったく異なり、ゆるぎない信念に裏打ちされた圧倒的な存在感を得られた次第。演出担当松本の言葉通り、「(年齢層は高いものの)円熟した役者たちが見せる魂の芝居」が楽しめる舞台となっていた。冒頭のオープニングダンスも、男ならではの圧・キレのあるパフォーマンスと、男性ならではの、低音の響きが見事な、厚みのあるボーカルが味わえた。


 今回のキャラクターの中で特に注目したのは、氷鏡庵役 佐藤正宏、界原依鳴役 白部由起夫、紅島弓矢役 小西優司、青池和麿役 小沢和之の4人。佐藤演じる氷鏡からは、これまでのマッドサイエンティスト風な印象から一転、町工場のおっちゃん的な雰囲気(あるいは、ノーベル賞を受賞するような科学者)も感じられ、(役に)人情味があることによって、突飛な発言にも真実味が備わってくるから不思議だ。



 界原は屋上の皆から距離を置く孤高の存在であるが、デッドリー10年目にして遂に、アノセリフを発するのだ。実は「アリスインデッドリースクール少年」にも近いセリフがあるそうなのだが、ここまではっきりとソレを口にするのは初。実は、白部の発案だそうで、脚本担当の麻草も「舞台は役者が作っていくものであり、(役者がセリフを変えることで)イメージが膨らんだり、役が生きているのを感じられて、すごくうれしかった」と絶賛していた。


 小西演じる紅島は、オトナ版をもう3歩上回るイイ人に造形されており、特に高森(石田太一)、猪狩(新村亨也)との関係性の変化、屋上に集う(取り残された)人々との距離感の違いも堪能できた。


 小沢演じる和麿は、バリトンボイスも耳に心地いいキャラクターであり、市長としての威厳も充分であるが、強く印象に残ったのは、和麿最後の決断シーン。これまでは、覚悟を決めた和麿と、残されてしまった静香という対比に見えていたが、本作では男の信念が受け継がれていくシーンとして描かれており、夢麻呂演じる静香は、ただ残されたのではなく、夢半ばで自死を選ばざるを得なかった和麿の意志をしっかりと継承するオトコとして存在しているのだ。松本演出の神髄が味わえるだろう。


 さて、当の松本はゲネを見た感想として「順調に終えられた」と、皆の芝居を絶賛。「オヤジたちが屋上で見せる化学変化を、ていねいに作り上げることができました。そのリアルな空気感、熱量を、来てくださったお客様に感じてほしい」とアピールしていた。


舞台「オヤジインデッドリースクール」

10月14(月・祝)日まで、池袋シアターKASSAIにて上演中

<キャスト>

布施勇弥 薫太 佐藤正宏 夢麻呂 白部由起夫 小野寺丈 小西優司 小沢和之 藤堂瞬 石田太一 白石裕規 新村享也 高見澤文彬 岩井翔 大島祐也



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